ナチュラリスト (文庫)

なぜいま「ドリトル先生」なのか? あなたの知的好奇心を刺激する白熱の全8講

生命の本質を見つめ、美しさと精妙さに溢れるこの世界をまるごと愛したい……。大富豪ウォルター・ロスチャイルドにドリトル先生、生涯をかけて恐竜や昆虫を追う世界中の科学者たち。先人たちに導かれるように、昆虫少年は分子生物学者を経て、「ナチュラリスト」へと回帰した。その転換点には何があったのか? 持続可能な社会のために、いま私たちにできることをやさしく問いかける生物学講義録。

はじまり

第1講 「系統発生」の時間軸

ドリトル先生を訪ねて歩く/なぜいま、ドリトル先生なのか/フェアネスというもの/「系統発生」の時間軸のお話/旅の予感

第2講 「個体発生」を追って

私が少年だったころ/世界に君臨する蝶/世界の記述がはじまる/ヒュー・ロフティングの町/大富豪、ウォルター・ロスチャイルド/ガラス玉の無数の目/ほんとうの世界/世界に目を向けて

第3講 なぜ生命史を私たちは必要とするのか

スタビンズくんの登場/未知の世界への憧憬/パドルビーを探したい/鮮やかなる虚実/ブリストルへ/ペンザンスの町の明かり/ドリトル先生と出会う

第4講 ナチュラリストに会いに行く

ナチュラリストの条件/よく気がつくこと/ヴィンチ村のレオナルド/時間軸を持つ/一冊の本から広がる世界/ロゴスを持つ/お茶の水博士に出会う/リアルな人間の友だちはいなくても/「進化論」についてひとこと/人生に大事なことはすべて虫から学んだ/子どもを放っておいてくれる親/図書館ワンダーランド/私のメンター、黒澤先生/私の人生を変えた人/ヤンバルテナガコガネ伝説/ナチュラリスト、田淵さん/地史の落し子たちに

第5講 メンターを探す

「博物館」の機能を探る/「黒澤先生」には今も会えるだろうか/収蔵品の基準は何か/世界にひとつだけ/昆虫標本責任者は蝶捕り名人/メンターの存在/フタバスズキリュウの奇跡/大伽藍を支える一本の釘/恐竜学者に出会って/大石化石ギャラリーへ/サメの歯の化石を「鑑定」してもらう/化石鑑定団に聞く/「恐竜倶楽部」なる秘密結社!?

第6講 博物学の本場、イギリスへ

イギリスの強さはどこにあるのか/「知の基地」として機能する/イギリス王立協会の存在

第7講 翻訳するという試み

新訳をやってみよう/一人称の妙技/ドリトル先生の年齢疑惑/新訳で得た至福の時間/物語に生じた変化/時間の有限性

第8講 「始まりと終わり」を知る

時間軸を知るための近道/生命を教える一冊として/時間を表現すること

ナチュラリスト宣言

ナチュラリストになるためのガイド

森田真生さん「解説」より

本書を読みながら、私は何だか、不思議な気持ちになった。様々な時間軸が交わる物語を読んでいるうちに、なぜか自分もまた、未来のどこかから、想起されているような気持ちになったのだ。何気ないと思っている目の前のこの瞬間も、どこか別の場所から見れば、一つの奇跡的な偶然かもしれない。現在という偶然に対する驚きと畏敬の気持ち。いまを生きるという経験の「センス・オブ・ワンダー」をあらためて感じた。


出版社 ‏ : ‎ 新潮社 (2021/9/29)
発売日 ‏ : ‎ 2021/9/29
言語 ‏ : ‎ 日本語
文庫 ‏ : ‎ 288ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4101262322
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4101262321


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