中谷宇吉郎の森羅万象帖

「雪は天から送られてきた手紙である」というフレーズで知られる中谷宇吉郎(1900年~1962年)。雪の結晶の美しさに魅せられ、3000枚もの写真を撮影して研究を重ね、世界初の人工雪をつくり、そのメカニズムを明らかにした科学者だ。

本書では、随筆家でもあった彼の言葉を道しるべに、科学者・中谷宇吉郎の軌跡を図版豊富に辿り、宇吉郎の科学に対する姿勢を浮き彫りにする。軌跡は、宇吉郎に科学者として強い影響を与えた生涯の恩師・寺田寅彦の下での火花放電の研究に始まり、その後の雪の結晶、霜、氷などの雪氷研究に至る。それぞれの研究で図版紹介する写真の多くは、宇吉郎が「観察の武器」として膨大な数を残した撮影記録で、自然現象のかたちを見事に捉えている。モノクロームの世界に浮かび上がるのは、空中に咲く火の花、空に舞う雪の華、氷中に滲み出る花々。自然はなんと美しく、また不思議で驚異であるか。そんな自然に宇吉郎は憧憬の心で向き合い、その神秘を解き明かすことで自然の美しさを真に理解しようと試みた。随所に散りばめた宇吉郎の言葉がそのことを示唆する。巻末に収録する福岡伸一(生物学者)を含む3名の論考等が中谷宇吉郎の思想を今日の科学につなげる。

観察用ルーペット付き。


単行本(ソフトカバー): 78ページ

出版社: LIXIL出版 (2013/3/20)

言語: 日本語

ISBN-10: 4864805040

ISBN-13: 978-4864805049

発売日: 2013/3/20